防水性の試験方法を定めた規格として、JIS L 1092(繊維製品の防水性試験方法)があるとされています。耐水度(水圧をかけて水が通るかを見る試験)や、撥水度(生地の表面に水を吹きかけて濡れ方を見る試験)が、この規格で扱われる代表的な項目とされています。ただし、規格の細かな条件や等級の定義は、この記事では断定しません。ここに書いた内容は、規格の原文やメーカーの技術資料で確認できる範囲の話です。

折りたたみ傘の商品名には「撥水」「超撥水」「撥水5級」「テフロン加工」といった言葉が並びます。一方で「防水」と書かれた傘は、あまり見かけません。この違いは偶然ではなく、傘の生地が何を目指して作られているかに由来します。この記事では、二つの言葉の違い、表示が何を測っているのか、数字が教えてくれないこと、使い方別の選び方を順に整理します。

「撥水」は表面の性質、「防水」は通すかどうかの性質です

撥水は、生地の表面が水をはじく性質です。水が玉になって転がり落ちる状態を思い浮かべるとわかりやすいと思います。防水は、水を生地の向こう側へ通さない性質です。前者は「表面での濡れ方」、後者は「裏側まで水が抜けるか」を問題にしています。

二つは重なる部分もありますが、別の性質です。表面が水をはじいていても、強い水圧がかかれば糸の隙間から水が押し込まれることがあります。逆に、裏にフィルム状の層を貼って水を通さない生地でも、表面の撥水が弱れば、表面が水を含んで重くなり、乾きにくくなります。

なぜ傘は「撥水」中心なのか

傘の生地は、糸を細かく密に織り、その表面に撥水の加工を施した作りが一般的です。傘は雨を斜め上から受け、水滴が生地の上を流れ落ちます。そのため、生地の隙間をふさぐ層よりも、水滴を早く落とす表面の性質のほうが役に立ちやすいのです。防水膜を貼った生地は、レインウェアなど体にまとう用途で中心になります。

誤解しやすいのは、「撥水と書いてあるから防水より劣る」「防水と書いてあれば完全に濡れない」という思い込みです。傘では、撥水加工された密な生地で必要な役目を果たす設計が一般的です。比べるときは言葉の格付けではなく、何をどう試した表示なのかを読むことが大切です。

数字や等級は「何を測った値か」で意味が変わります

商品名や説明で目にする数字は、大きく三つの種類に分かれます。どれも同じ「水に強い」を指しているように見えますが、測っている対象が違います。

  • 撥水度の等級:生地の表面に水をかけたとき、どれだけ濡れずに残るかを段階で表したものです。JIS L 1092にスプレー式の撥水度試験があるとされています。
  • 耐水圧(耐水度):生地に水圧をかけ、水が染み出してくる圧力を水柱の高さなどで表したものです。「水を通さない力」を測っています。
  • 生地の密度を示す表記:「310T」のような表記です。糸の密度を表す数字とされますが、算出の仕方はメーカーごとに説明が異なることがあるため、製品ページや取扱説明書で確認してください。

「撥水5級」とあれば、撥水度の等級を示していると読めます。一般に、等級の数字が大きいほど水をはじく状態を示す表示とされています。ただし、どの試験方法で、洗濯や使用の前の新品で測った値なのかは、商品名だけではわかりません。

基準の中身は、表で整理すると見分けやすくなります

混同しやすい用語を、「何を測るか」「どこで確認するか」に絞って並べます。数値の基準は、表示元の説明に従ってください。

表示・用語測っているもの確認する場所
撥水(撥水度・撥水○級)生地の表面で水をはじく程度。等級は段階評価商品ページの表示、取扱説明書、メーカーの技術資料
防水・耐水圧(耐水度)水圧をかけたとき、水を通さずにいられる限度商品ラベル、メーカーの仕様欄
T(310Tなど)生地の糸の密度の目安商品ページの素材欄。意味の説明があるかを見る
テフロン加工などの加工名表面に施した加工の呼び名。撥水の度合いを直接示す数字ではないメーカーの加工の説明、お手入れ表示
JIS認証・JIS準拠の表記どの規格の、どの項目に対する表記かは名前だけではわからない規格名と項目名が書かれているか、試験結果の記載

ラベルを読むときの手順

表示を読むときは、次の順で見るとぶれません。

  1. 用語が「撥水」「防水」「耐水圧」のどれかを確認します。
  2. 数字や等級があれば、「何の試験か」が書かれているかを見ます。書かれていなければ、比較には使いにくい情報です。
  3. 「新品時の値」か「洗濯・使用後の値」かを確認します。
  4. 書かれていない項目は、メーカーの表示・公式の案内で確認します。

数字が教えてくれないことが、実際の使い心地を左右します

等級や耐水圧は、特定の条件で測った結果です。実際の通勤や買い物では、条件が違います。数字からは読み取れない点を挙げます。

時間とともに変わる撥水性

撥水は表面の加工なので、摩擦、汚れ、折りたたみの繰り返しなどで状態が変わることがあります。購入直後の表示と、数か月使った後の状態は同じとは限りません。お手入れの方法や、撥水を保つ手順は、取扱説明書やメーカーの案内に従うのが安全です。

生地以外から入る水

傘の濡れは、生地の撥水度だけでは決まりません。骨の付け根、縫い目、先端の石突き周りなど、生地以外や縫製部分の作りも関係します。また、傘の大きさや骨の本数によって、体や荷物が濡れる範囲も変わります。生地の等級が同じでも、使い心地が同じとは限らないのはこのためです。

風と強さは別の問題

撥水や防水は、水に関する性質です。強風で傘が裏返るか、骨が折れるかは、骨組みの構造や強度の問題で、撥水度とは別の話です。「耐風」や「逆折り式」「逆戻り防止」といった表現は、骨組みや開閉の仕組みについての言葉として読み分けます。

濡れた後の傘の扱い

撥水が十分でも、生地の水は残ります。折りたたみ傘は、濡れたまま袋に入れるとにおいやカビの原因になりかねません。帰宅したら広げて陰干しをする、という基本が結局は一番大切です。

用途別の目安は、あなたのタイプから決められます

ここでは、タイプ別に何を優先するかを整理します。なお、紹介する商品は、いずれも商品名に「撥水」や撥水に関する表記がある例です。「防水」や耐水圧の数字は商品名に書かれていないため、防水性能を比べられる例ではありません。撥水側の例として見てください。

あなたが大きさと風への備えを重視するタイプなら

通勤や出張で、荷物や肩まで雨から守りたい人は、傘の大きさと骨組みが気になります。この場合、撥水の等級だけでなく、骨の本数、開閉方式、逆折りかどうかを確認します。次の商品は、商品名に「12本骨」「ワンタッチ」「逆折り」「耐風」「テフロン加工」「撥水」とあり、大きさと風への備えをうたう例として挙がります。

12本骨 ワンタッチ折りたたみ傘 テフロン加工 撥水
12本骨 ワンタッチ折りたたみ傘 テフロン加工 撥水

大きい傘は、そのぶん収納時の長さや重さも増えます。毎日バッグに入れるなら、収納サイズも仕様欄で確認してください。

もう一つ、商品名に「超大サイズ」「逆折り式」「テフロン加工」「晴雨兼用」「UVカット」などの言葉を並べた例です。名前に「JIS認証」とありますが、どの規格のどの項目を指すのかは名前からはわかりません。気になる場合は、商品ページの試験結果の記載や、販売元の説明を確認してください。

超大サイズ 逆折り式 折りたたみ傘 テフロン加工
超大サイズ 逆折り式 折りたたみ傘 テフロン加工

あなたが軽さと扱いやすさを重視するタイプなら

毎日持ち歩くなら、使うたびのストレスが少ないほうが続きます。開閉のしやすさ、重さ、バッグに入れたときの収まりを優先します。次の商品は、商品名に「形状記憶」「310T」「撥水5級」「超軽量」「自動開閉」とあります。撥水の等級が名前に明記されている例ですが、どの試験方法かは確認が必要です。

形状記憶 折りたたみ傘 310T 撥水5級
形状記憶 折りたたみ傘 310T 撥水5級

あなたが生地の撥水と持ち歩きの工夫を重視するタイプなら

雨の日以外はバッグの中に入れたままという人は、撥水性とともに、持ち運びの工夫も気になるはずです。次の商品は、商品名に「10本骨」「超撥水」「310T」「逆折り式」「逆戻り防止」「カラビナ設計」とあります。カラビナを使ってバッグなどに掛けられる設計を示す表記と読めますが、具体的な使い方や耐荷重などは名前にないため、仕様欄で確認してください。

HAGOOGI 10本骨 折りたたみ傘 超撥水310T
HAGOOGI 10本骨 折りたたみ傘 超撥水310T

防水性そのものを重視するタイプなら

「水を通さないこと」を最優先するなら、傘よりもレインウェアやバッグのカバーといった、防水を前提にした製品が向いています。傘を選ぶ場合は、耐水圧の数字と試験方法がラベルに書かれているものを探します。書かれていない場合は、メーカーに問い合わせるか、仕様欄で確認します。

よくある失敗・見落としがちな点

  • 「撥水=濡れない」と思い込む:撥水は水を玉にして落とす性質で、水を通さない保証ではありません。長時間の雨や、生地を押し付けたときに裏側がしっとりすることがあっても、ただちに不良とは限りません。
  • 等級だけを比べる:「5級」「超撥水」といった言葉は、試験方法や測った時点が違えば同じ土俵では比べられません。等級の横に「何の試験か」が書かれているかを見ます。
  • 晴雨兼用のUVカット表記を雨の性能と混同する:遮光や紫外線に関する表記は、雨への強さとは別の性質です。雨に使うなら、撥水・耐水圧の表示を別に確認します。

よくある質問

Q1. 撥水の傘は、雨の中でも内側まで濡れませんか?

密に織られた撥水生地の傘は、通常の雨で内側に水が染みにくい作りが一般的です。ただし、強い水圧や長時間の使用、生地の摩耗や汚れの影響で、裏側がしっとりすることもあります。濡れ方は使う環境や状態によって変わります。

Q2. 「防水」と書かれた傘のほうが、撥水の傘より優れていますか?

優劣ではなく、目的の違いです。傘では撥水加工された生地が一般的で、防水性を主役にした設計は多くありません。「防水」とある場合も、耐水圧などの数字と試験方法が書かれているかを確認してください。

Q3. 撥水の効き目が落ちたと感じたら、どうすればいいですか?

まず、汚れが付いていないか、取扱説明書にお手入れの方法が書かれているかを確認します。洗い方や撥水剤の使用可否は、素材や加工によって異なるため、メーカーの案内に従ってください。

Q4. 「310T」は数字が大きいほど雨に強いのですか?

糸の密度の目安とされる数字で、一般に密度が高いほど生地の目が詰まった作りを示します。ただし、雨への強さは撥水加工やその状態にも左右されます。数字だけで雨への強さを判断せず、他の表示と合わせて見てください。

Q5. 商品名の「JIS認証」は、撥水が規格に合っているという意味ですか?

名前だけでは判断できません。どの規格の、どの項目についての表記かが書かれているかを確認します。説明がない場合は、販売元の案内や試験結果の記載で確認するのが確実です。

買う前に見る3か所を確認しましょう

  1. 撥水・防水の表示の種類:「撥水」なのか「防水」なのか、等級や耐水圧の数字があるかを確認します。数字がある場合は、何の試験で測った値かも探します。
  2. 素材欄と生地の密度表記:素材、「310T」などの表記の意味、加工名(テフロン加工など)の説明があるかを確認します。
  3. お手入れ表示と収納サイズ:撥水を保つ手入れの方法、広げた大きさ、たたんだ長さ、重さを確認します。毎日持ち歩く量に見合っているかが、続けやすさに直結します。

確認できない項目は、商品ページの仕様欄、製品ラベル、取扱説明書、メーカーの公式の案内で確かめてから決めてください。

参照した情報

  • JIS L 1092(繊維製品の防水性試験方法)
  • 製造元の技術資料

この記事は、規格の名称と製品の表示をもとに、撥水と防水の違いを整理した編集部の解説です。更新日:2026年10月9日。